失われた公演

庭劇団ペニノ
『蛸入道忘却ノ儀』

公演団体

庭劇団ペニノ

作・演出

タニノクロウ

宣伝美術

山下浩介

公演日程

2020年3月7日(土)~3月8日(日)※三重公演中止

会場

三重県文化会館小ホール

コメント

「蛸入道忘却ノ儀」はどうやら“憑いている”作品のようだ。

2018年初演直後に出演者の急な離脱があり、2019年の京都公演では台風が直撃、2020年東京公演では舞台美術に関して消防署との折り合いが付かず全公演をキャンセル、そして新型コロナウィルスによる三重公演の中止と続いた。これら全ての損害は桁違いで、劇団を完全に破壊した。

三重公演の中止は公演日の数日前、2月28日、前の地である福岡でゲネプロを行なっている最中に連絡を受けた。ゲネプロを終えてチームに中止の決定を伝えた時、誰もが悲鳴の面持ちで絶句した光景は今も鮮明に焼き付いている。福岡公演は予定通り行ったが、当然打撃を受けた。チケットのキャンセルが相次ぎ、見込んだ動員の三分の一ほどになった。制作側も日々の感染対策と各技術セクションへ変更を伝える対応に追われた。現在より得体の知れないものへの不安が強い時期だったが、福岡のフェスティバル事務局の方々の尽力を以てサポートしてくださり、常に寄り添っていただいたことは忘れることがないだろう。

最近色々なところでこのようにコロナ禍の活動状況を語る機会が増えたのだが、その度に演劇自体が過去のもののように感じてしまう。かつて存在した文化「演劇」のように。だからと言って、演劇なんて随分前から前時代的な営みだったなんてツっぱるのも年寄りくさくて良い気がしない。

この時期、言葉を浮かべたり投げたりすることは、自己否定と肯定が入り混じり最終的に何も残らない。得体の知れないものを相手に起きた先行きの不透明さが妄想と言葉を等価にしたように思う。これが理由で私はフィクションを描くことが一時的に難しくなっていた。

現在私はリハビリ生活を送っていると言える。決して作家として延命したいが為のリハビリではない。こう言ってよければ、人間らしく生きる為のリハビリだ。だから今は以前からの夢であったSMクラブを作ろうと動いている。全く新しいコンセプトの秘密クラブ。そのために今はジムでハードなトレーニングを積む毎日だ。

色々な縁を得て20年演劇を作って来たのだが、このまま長く飽きずに演劇をやり続けるかどうかが分水嶺となる、と割り切って生きていくこともできるだろうが、私はそこまで優秀か詐欺師ではない。べっちょりぐっちょり、まんまんのぺろりんちょだ。

タニノクロウ(庭劇団ペニノ)/2020年7月27日

関連リンク

http://niwagekidan.org

資料提供

庭劇団ペニノ

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