失われた公演

劇団山の手事情社 2019年度研修プログラム修了公演
『オドラデク』

公演団体

劇団山の手事情社

構成・演出

安部みはる

宣伝美術

近藤央希

公演日程

2020年4月8日(水)~4月12日(日)

会場

大森山王FOREST

コメント

劇団山の手事情社が俳優育成のために毎年行なっているプログラム「俳優になるための年間ワークショップ」。2019年度の稽古は5月にスタートし、約1年かけて基礎から演劇を学び、2020年4月に「修了公演」を実施する予定でした。2月末頃から新型コロナウィルスの感染が拡大し始め、私の出演予定だった山の手事情社の本公演『桜姫東文章』が延期になりました。さすがに4月には感染も収まっているものと予測し、より一層熱を入れて稽古をしていた4月初め、緊急事態宣言が出されるという情報が入りました。そこで断腸の思いで公演中止を決断しました。

演劇は本来、俳優が発するエネルギーによって見ている観客の生の反応が返ってきて、舞台と客席が一体になることでようやく完成する芸術です。この『オドラデク』という作品は、劇団関係者の多大な協力によってできる限り最良の映像を残すことができましたが、観客の前で上演することは叶わず、コロナウィルスによって永遠に未完成の作品となりました。時期がずれていれば、感染対策を徹底して上演することもできたと思います。

『オドラデク』というのは、フランツ・カフカの短編小説「父の気がかり」に登場する理解を超えた存在です。その存在と現代の若者の中にある自分にすら理解できていない「自分」がリンクします。目に見えない恐怖が姿を現し、人と人の間に透明なパネルが置かれ、マスクによって人間の顔がわからなくなっている現在、舞台という今まで当たり前にできていたことが当たり前ではなかったのとに気がつき、生の舞台の価値を再認識するきっかけとなりました。

安部みはる(劇団山の手事情社)/2020年9月10日

関連リンク

https://www.yamanote-j.org/

資料提供

有限会社アップタウンプロダクション・劇団山の手事情社

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