TAAC
『世界が消えないように』
公演団体
TAAC
脚本・演出
タカイフミアキ
宣伝美術
立花裕介、北村美沙子
公演日程
2020年6月24日(水)~6月30日(火)
会場
下北沢 駅前劇場
コメント
脚本の締め切りが迫り、書くことだけに専念していただろう時期に、このコメントを書いていることが無念でなりません。今この瞬間もまだ上演か延期か揺れ動いている僕がいます。でも皆さまにこれを読んでいただいているということは、延期になったということでしょう。
まずは、このような結果となり大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。しかも、ギリギリまで粘って皆さまをお待たせしながらこのような結果になってしまった事は僕の力不足だと痛感しております。
少し前まで僕はファーストペンギンにならなければいけないと思っていました。ファーストペンギンとは、集団で行動するペンギンの群れの中から、天敵がいるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛びこむ1羽のペンギンのことです。自粛が続く演劇界において実施に踏み切るには、徹底した感染拡大防止策はもちろんのこと、大きな決断を下す勇気が必要になります。演劇界にはファーストペンギンが必要です。誰かが最初に大きな海に飛び込むのを待っています。だから、6月にはどうにかしてこの自粛ムードを断ち切りたい、なんとか上演ができる環境にできないか、そう思って準備を進めていました。また、2月3月に上演された他の劇団や団体の劇場での感染防止策の知見の集積により、劇場での感染リスクをかなり抑えた運営が可能だろうとも思っていました。
ただ、最近ではようやく感染者数が落ち着いてきているものの、第2波第3波と言われている中、今後の感染者数の推移が予測できないこと、キャストやスタッフ・その家族や関係者、そしてお客様に感染者が出た時点で上演ができなくなることなど、多くのリスクを抱えながらの演劇活動は避けるべきだという考えが次第に大きくなっていきました。悔しいですが、僕にはコロナから彼らや皆さまを守ることはできません。加えて、延期の際の劇場を押さえられたことが決断の後押しとなりました。結果、僕はファーストペンギンにはなれませんでした。すみません。
「世界が消えないように」は同年代かつ男性のみのキャスト構成で、TAACとしては初めての試みでした。3ヶ月前の2月20日、6人と顔合わせをしてワークショップをしました。僕が書いた10行にも満たないたわいのない台詞を代わる代わるやってもらいました。それがとても楽しかった。この6人が混じり合ったらどうなるんだと興奮したことを強く覚えています。永嶋柊吾、松本大、大野瑞生、土屋神葉、髙橋里恩、三好大貴。この6人と出会えたことに心から感謝しています。そして、やっぱりこの6人で芝居をしたい! だから今、可能な限り全員が集まることができるよう調整しています。でも、それが叶わなかった時はごめんなさい。誰のせいでもありません。
今回の延期に際し、この決断に理解を示してくれた役者、スタッフ、関係者の皆さまに深く感謝致します。そして、公演を楽しみにしてくれていた皆さま、改めてごめんなさい。
タカイアキフミの芝居は、劇場で空間を共にするからこそ伝わる人間の機微や日常生活の小さな粒子を描いた不器用で融通の利かない作品が多いです。コロナによって演劇のカタチが多様化していく中、僕の芝居は淘汰されていくのかもしれません。それでも、今こそ僕は劇場に目を向けたいと思います。劇場でしかできないこと、劇場だからこそできることを考えたいと思っています。また、皆さまと劇場でお会いできますように。これからも僕は劇場でお待ちしております。
(※HP掲載の延期挨拶「タカイフミアキより皆様へ」を転載 https://www.taac.co/info-sekai)
タカイアキフミ(TAAC)/2020年5月14日
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資料提供
TAAC