失われた公演

ケダゴロ 第3回公演
『ビコーズカズコーズ』

公演団体

ケダゴロ

振付・構成・演出

下島礼紗

宣伝美術

天満星南(ケダゴロ)

公演日程

2020年5月28日(木)~5月31日(日)

会場

小劇場B1

コメント

我々ケダゴロは、2020年1月ダンスフェスティバル参加の為、香港に滞在していました。その時、新型SARSが流行し始めていると現地スタッフに聞いていましたが、新型SARSについての関心は 低く、激化していた香港デモについて色々と注意を向けていました。

帰国後、今度は2月に横浜の赤レンガ倉庫で国際ダンスフェスティバルに参加していました。ダイヤモンド・プリンセス号が横浜湾に到着した頃でしたが、世界各国から多くに人々がフェスティバルを訪れ、全員マスクは着用していましたが、正直、いっときの騒ぎだろうという考えだったと思います。

その後、3月に本公演の稽古が本格的にスタートしました。いくつかの公演中止の情報も入ってきていて、雲行きは随分怪しくなってきていましたが、まさか中止になるなんて考えたくもなかったので、5月末までには必ず収まるという根拠のない自信を持っていました。作品づくりの邪魔するな! そんな憤りすら感じていましたが、今考えれば、そういう思考だったことを恥じます。世の中は変化するものということを忘れ、当たり前の日常の中で安心安全な作品づくりに没入してしまっていたのかもしれません。「世の中の変化と共に、舞台や表現の役割を考え、変容する世界を鋭い視座で捉えた先に作品を生む」。そういう活動を目的としていたにもかかわらず、対応できない自分に苛立ちを感じていました。

緊急事態宣言が発令されたあとも、わずかな可能性にかけて自宅稽古を継続し、毎日のように関係者との議論が交わされましたが、ついに5月4日緊急事態宣言延長の発表を受け、公演中止が決定しました。

このチラシは、3月末に公開予定でしたが、連日の公演中止や有名人のコロナ感染が相次ぎ、自粛警察が牙を剥いている状態だったので、何度も情報公開のタイミングを遅らせました。しかし、情勢は悪化の一方で、結局良きタイミングなど見つからないまま、人々が寝静まった真夜中にひっそりとSNSに公開しました。宣伝の為のチラシなのに、まるで隠し子のように扱われたチラシです。それでも、私達にとっては、公演が確かに存在していたという大切な証明書です。

なぜ舞台をつくっているのか、こういう時に人間が試されるのだろうか、このまま淘汰されてしまうのではないか、色んな思考が頭の中で錯綜したこの一年。今辿り着いた一つの答えは、コロナ時代に、コロナ後の世界に、表現者という立場から向き合い続けたいということです。

中止になった本公演は、2021年6月にコロナ時代の新たな作品として上演を予定しています。

血涙を絞る思いを巨大なエネルギーに変え、生の舞台を目指します。

下島礼紗(ケダゴロ)/2020年12月16日

関連リンク

https://kedagoro.wixsite.com/kedagoro

資料提供

ケダゴロ

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