社会の中で演劇がどういう存在でいたいのか
小川絵梨子(新国立劇場演劇芸術監督)
公演が中止となり、いつ再開が出来るのか分からない中、それでも劇場は止まっていない事を、在宅を余儀なくされている多くの皆さまにお伝えしたく思い、ネット上で二つの企画、「おうちで戯曲」「演出家リレーメッセージ」を行いました。
また、今回中止となった作品をこの先どう存続させられるか、関わってくださっていたキャストやスタッフの方々へのフォローはどうするのか、この先の企画の変更などについて動きながら、新国立劇場として公演をする体力と機会がある限りはまず公演を再開し、出来る限り公演をし続けることが大切だと考え、劇場スタッフとともに感染症対策の考案を進め、いつでも演劇を再開できる様、準備を進めました。
これまでとは程遠い状況の中、今の社会の中に演劇がどういるのか、これから今の社会とどんな関係でありたいのか、試行錯誤しなければと思います。この期間中に私が気になったのは、意見や考え方の違いよりも、感覚的な違いやズレでした。もちろん個人や世代でも異なるとは思いますが、感覚の乖離のようなものがあるのではないかと自省と共に感じています。多種多様な演劇の魅力は失われるべきではないですが、演劇がどういう存在でいたいのか、いま一度考えねばと思います。
2020年9月24日
新国立劇場
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